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  土間の魅力、再発見

土間の魅力、再発見  その昔、民家には、家の半分ほどを占める土間という玄関にあたる場所がありました。居間や寝室など床を張った居住スペースより低く地面むき出しで、埃などが立たないよう石灰や土で叩きしめてありました。家の中とはいえ地面と同じですから、下りる時はつっかけなど簡単な履物を履いて利用しました。


 この土間という広いスペースは実にさまざまな用途に使われ、民家にはなくてはならないものでした。大まかに言って台所、食糧などの貯蔵庫、作業場の役目を果たしていました。


 まずは台所としての機能です。煮炊きをするかまどや流し、水瓶など調理に必要なものが揃っていました。水をこぼしたり料理がふきこぼれたり、食材から土や残菜が落ちたりしても、土の上なので気兼ねがいらない点はちょっとうらやましいところです。


 次に調理に使うさまざまな食材も、同じ土間の一角に貯蔵してありました。塩はもとより、味噌やしょう油といった調味料も置いてあったことでしょう。食糧のほかにも、生活に必要なワラや焚き木、農機具などの資材や道具も収納していました。


 最後に作業場としての機能です。農家をはじめ昔の家々では、必要なものを稲わらや木を使って巧みに自作して使用していました。そうした作業を行うのも土間です。ゴザを敷いてその上で縄をない、草鞋(わらじ)や笠(かさ)つくり、収穫した豆のさやを取ったり、干しておくものを縄にくくりつけたり。日中の農作業の残りを、夜あかりをともしておこなうほか、雨や雪など天候の悪い日に屋外でできない作業をする場として重要な役割を果たしていました。


 夕暮れ時には、お母さんが赤子を背負って煮炊きにいそしみ、お父さんは農具の泥を落として収穫した野菜の葉を切り落としたり虫の食ったものをより分けたりしながら、出来を振り返る。まだ幼い兄弟がお父さんのかたわらで、鎌の使い方を教わって手伝いをする。土間は煮炊きの湯気とおいしそうな匂いで満たされている。そんなつつましくも温かい光景が、かつての家々の玄関である土間では繰り広げられていたことでしょう。


 さらに土間は、近所の人がちょっとした用事で来ては部屋まで上らずに気兼ねなくお喋りをするコミュニケーションの場としても機能し、現代では見直すべきものがあります。


 一時減る一方だった土間も、こうして良い点が見直され、最近は土間を取り入れた家を建てたり、土間を活かした古民家のリフォーム例も見られます。伝統的な土間の様子は、各地の古い民家を保存している施設
で見学することが出来ます。一度その魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
(東京では江戸東京たてもの園、世田谷区立岡本公園民家園など)


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