HOME > 住まいづくり情報 > コラム > ニッポン玄関アーカイブ

住まいづくり情報

コラム

  ニッポン玄関アーカイブ

ニッポン玄関アーカイブ  今回は、「一見の価値あり!」の玄関がいろいろ見られる場所を集めてみました。 まずは東京都小金井市にある「江戸東京たてもの園」。都内にあった江戸時代から昭和までの貴重な建築物を敷地内に復元・移築した野外博物館で、園内はまるでひとつの町のよう。通路に沿って時代の異なる興味深い建物がいっぱい並んでいて、知らないお宅を訪ねる気分で「ごめんくださ〜い」と家々の玄関めぐりができるのがミソです。


 注目は子宝湯。ここは典型的な銭湯で、玄関上に七福神の彫刻があったり、脱衣所に格子天井が施してあったり、贅をつくしたつくりが特徴です。こうしたディティールを見ていると、いかに当時銭湯が町の中で重要な存在だったかが伺えます。ちなみにこの銭湯は、宮崎駿監督のアニメ「千と千尋の神隠し」に出てくる湯屋のモデルになったといわれていますから、その意味でも要チェックです。


 また、江戸時代の農家「吉野家住宅」は、式台付きの玄関があり、武士など偉い人を迎え入れる仕組みが整った格式の高いつくりが特徴です。こうした造りが、やがてのちの時代の一般住宅のモデルへとつながっていったようです。他にもダルマ宰相の名で親しまれた高橋是清邸や著名な建築家前川國男の洋風の邸宅など、それぞれ玄関に表情があり、たっぷり楽しめます。


 中部地方なら「明治村」を欠かすことはできません。名の通り明治時代の建物を、日本だけではなく、海外からも移築した野外博物館です。規模はたてもの園以上で、まるまる1日遊べます。村内には明治の文豪・森鴎外、夏目漱石の住宅があり、時空を超えて歴史上の人物のお宅を訪ねることができます。


 豪華なつくりを想像しますが、実際はどちらも当時の典型的な中流住宅。玄関は引き戸でとても質素。この家で鴎外は「舞姫」、漱石は「吾輩は猫である」などの代表作を執筆しました。海外からはシアトル日系福音協会(旧シアトル住宅)が第二次大戦後に明治村へ移築されています。玄関ホール正面には細工が施された2階への階段があり、堂々とした雰囲気が味わえます。他には教会もいくつか移築されていて、ゴシック様式の特徴といえる尖頭アーチがある正面玄関も見ることができます。


 これ以外にも、南国のバンガローのように、メインの玄関がない日本最古の木造洋館グラバー邸のある「グラバー園」(長崎県長崎市)や、馬が通れ
るように玄関が広い造りになっている伝統的な「曲り家」旧菊池家住宅など
がある「伝承園」(岩手県遠野市)も、興味深い玄関がいくつか見られる場所
です。一度、訪れてみてはいかがでしょうか。


前へコラムTOPへ次へ ≫