コラム
玄関にまつわる幸運を呼ぶおまじない
玄関にまつわる幸運を呼ぶおまじない
今回は幸福を招く、玄関に伝わる言い伝えのお話しをしましょう。 みなさんの地方に「蘇民将来」(そみんしょうらい)という言い伝えはありませんか? これは玄関先に護符(お札)を掛けておけば、災いを除き、福を招くとされる民間信仰で、各地で信じられています。 言い伝えの起源は明らかではなく、内容には仏教や日本の神話のほか、朝鮮半島の信仰を思わせる要素も入り混じる出所不明の言い伝えです。
おおよそ共通するストーリーはこういうものです。 この旅人、実は薬師如来の化身である牛頭天王(ごずてんのう)で、旅立つ際、柳の札に「蘇民将来子孫人也」と書いて玄関に掛けておくように伝えます。その通りにした蘇民将来・兄は、子孫に至るまで、無病息災でますます栄えたといいます。 岩手県などでは今も伝承にもとづく蘇民祭を盛大に行っていますし、京都の八坂神社では祇園祭の際、「蘇民将来子孫人也」と書いた粽(ちまき)を配ります。また長野県上田市にある信濃国分寺でも、独特の六角形をした柳材の護符を配り、家々ではこれを玄関口に掲げます。 さて、玄関に護符を掛けるこの風習ですが、同じ話にルーツを持つ風習がもうひとつあります。これは神社の入り口にある鳥居に取り付けられた茅の輪(ちのわ)をくぐる「茅の輪くぐり」です。これもやはり全国的に有名な風習で、これをくぐれば病や罪を祓うことができるというものです。
「蘇民将来」の伝承には、牛頭天王はスサノオノミコトの化身であるとするものもあり、言い残した内容も娘の腰に小さな茅の輪を付けておくようにという内容だったとするものもあり、そうした内容が、茅の輪くぐりの風習へとつながったようです。
家々の戸口につける護符、そして神社の表玄関である鳥居に付ける茅の輪。 |